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根付師「陽佳」
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剥きかけの “ バナナ ” の根付です
DATA
『恋バナナ』 2013~2014
象牙
象嵌なし
エンジュ染め、ヤシャ染め
2.3 × 5.4 × 3.0 cm
2.3 × 5.4 × 3.0 cm
~ 作者蔵 ~
なぜ? ただのバナナではなく、 『 恋 』 バナナなのか・・・
剥きかけの半分になったバナナをよく見ると・・・
恋しい人への思いを思わずバナナに書いてしまったのか、
それとも愛の告白をバナナに託して渡そうとしたのか、
何やら意味ありげなバナナ・・・
掌(てのひら)にのせて眺めれば眺めるほど、想像が膨らむ根付です。
紐通しの穴は、クルッと丸まった皮の自然な部分の空間を利用します。
実際に 「 I LOVE 」 の文字を刻んで・・・
根付とともに桐箱に入れる自筆の 『 極め書(きわめがき) 』
これを書き終えると、ホッとします
≪ 根付の魅力 と 天然染料の魅力 ≫
天然染料の良さは、時間とともにその色合いが変化していくことかもしれません。
日本では昔から藍染の色が使っていくうちに変化することを 『 藍がさめて、いい色になる 』 といい、
その使いこまれて変化していく色や風合いを愛し、それが藍の魅力の一つでもあります。
根付もまた、帯に留めて何年も使用しているうちに、手で撫でたり、こすったり、着物や帯にあたって擦れたところは、色が落ち、ところどころ磨滅してきますが、それを根付の 『 なれ 』 といい、
それこそが“ 根付 ” の大きな魅力でもあり、愛されて使い込まれた“根付”の証とも言えます。
今回は美術館の長期展示という事で、エンジュに染め替えをしましたが、クチナシのままでも味わいのある色に変化したことでしょう・・・。
◆次回は・・・第二話?? or 鯛の話?
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根付師「陽佳」
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バナナの染め替え です。
正しくは “ バナナの根付 ” の 染め替え です。
昨年創りました 根付作品 『 恋バナナ 』 を、
古川美術館企画展「芸術寸法-床の間芸術から会場芸術への展開」
に出品するにあたって、
2ヶ月という長い期間、照明下に展示する事を考慮し、
当初は “ クチナシ(梔子) ” という天然染料で染めていたバナナの黄色を、
比較的退色しにくいとされる “ エンジュ(槐) ” という天然染料の黄色に
新たに染め替えて、出品する事としました。
●“クチナシ(梔子)” ●“エンジュ(槐)”
一口に黄色と言っても、使う天然染料によって赤みが強い黄色だったり、
青みが強い黄色だったり微妙に色調が異なります。
青みが強い黄色だったり微妙に色調が異なります。
実物のバナナ自体も、生産地や品種によって
バナナの黄色の色調も異なります。
バナナの黄色の色調も異なります。
当初、この作品を創った時は、柔らかい淡い色調のバナナをイメージし、
数多ある黄色系統の天然染料の中から、あえて“クチナシ”を選びました。
そして、今回染め替えに選んだ“エンジュ”は、クチナシに比べると、
やや青みがかったハッキリと強い黄色に染まります。
やや青みがかったハッキリと強い黄色に染まります。
≪クチナシ使用≫
↓
≪エンジュ使用≫
とは言っても微妙な色調の差で、作家がこだわるほど違いが無いと言えば無いかもしれませんが…
『2ヵ月間、元気に美術館に展示され、多くの方に観ていただいて欲しい!』という願いをこの根付に込め、染め替えました。
染め替え終わったバナナは全体が濃いめの黄色に
皮裏の白い部分を、実物のバナナを見ながら彫りこみます。
彫る道具は、象牙を彫る 『 左刃(ひだりば) 』 と呼ばれる特殊な刃物で、
自分で鋼材(こうざい)から加工し、“ 焼き入れ ” & “ 焼き戻し ” をした後、
砥石で研いで仕上げて作ります。
◆次回は・・・つづいて 作品 『 恋バナナ 』
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書&篆刻「湖蝶」
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書展を開催した鎌倉芸術館ギャラリーの風景
ギャラリー入口
受付
素敵なお花をいただきました!
お花があると、会場がパッと明るくなります♪
ギャラリー中央に置かれている展示ケース。
私の篆刻作品が並びます。
今回の新作~「蝸牛型印 2種」
大きいカタツムリ
殻の中に 『陽佳之印』 の文字が篆書で嵌め込んであります。
小さいカタツムリ
殻の中に『一歩一歩』の文字が篆書で嵌め込んであります。
カタツムリの創作風景(地下室工房より)
今年の新作~「鹿角印 7顆」~
グループのメンバー全員の雅号を鹿角の先端の自然な形を生かして落款印に
般若心経の文字を印にしている、「カタチある篆刻」シリーズ
今年も書展の夏が終わりました…
お暑い中、ご来場くださった約500名の皆様、本当に有難うございました。
◆次回は・・・根付の染めの事?
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「湖蝶」 & 「桃生蛙子」
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大学の書道科を卒業後、
書道科の先輩方のグループ書展に仲間入りさせて頂いてから早くも22年・・・。
毎年夏8月に開催しているこの書展も、今年で23回目を迎えました。
~ 創作 ~
≪ 「夏」 桃生蛙子の言葉より ≫
≪ 「夏」 桃生蛙子の言葉より ≫
~ 創作 ~
≪ かたつむり ≫
~ 創作 ~
≪ 麒麟 ≫
~ 創作 ~
≪ 篆刻 蝸牛型印 2種 ≫
~ 臨書 ~
≪ 黄庭堅(こうていけん)筆 草書諸上座巻 ≫
書の基本をいつまでも忘れずにという事から、
出品する作品は “ 創作 ” だけでなく、
必ず “ 臨書 ”(りんしょ)作品を1点書くことになっております。
大きい作品は家の中で書けない為、毎年炎天下の中、
庭の駐車場で作品を書くことに・・・。
< 駐車場が青空書作アトリエとなる様子です!>

◆次回・・・書展会場風景?
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根付の豆知識
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“差根付(さしねつけ)”とは、根付の形態の一つです
刀や扇子を帯(男性用)に差すのと同じように、
根付を帯の上から差して装着します。
この場合の根付は帯の下でゴロゴロしない程度の厚みで細長く、
上部に紐を通す “ 紐穴(ひもあな) ” があります。
●上下に突起部分があるタイプ(下記図 左側のその1)と
※厳密にいうとこのタイプは『帯挟根付(おびはさみ)』となりますが…
●帯に差すタイプ(下記図 中央のその2)があります。
帯の下をくぐらせて帯上にだす一般的な手のひらサイズの根付とは、
装着方法が異なります。(下記図 右側)
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根付師「陽佳」
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トンボの差根付です
DATA
『 蜻蛉生まる 』 2007
象牙
象嵌あり ( 白蝶貝 )
ヤシャ染
1.1 × 12.7 × 2.0 cm
~ 京都清宗根付館 所蔵 ~
池の中から、トンボの幼生 「ヤゴ 」 が竹の棒を伝って水面に顔を出し
水面から伸びる竹の棒は、いつしかトンボの胴体となり
美しく長い羽のトンボへと変化していきます
トンボの幼生が水中から竹の棒を伝って羽化する様子を、
「 時間 」 と 「 空間 」 をギュッと凝縮して、
1本の差根付で表現してみました。
1本の差根付で表現してみました。
竹の棒についた “ 水滴 ” を 「白蝶貝」 (しろちょうがい) を象嵌して、
涼しげな水面のイメージを演出。
“ 紐穴 ” (ひもあな) はトンボの絡み合う6本の腕のスキマを利用します
◆モデルは夏になると庭に飛来してくる様々なトンボ達です!
( 胡瓜の葉の上で羽を休めるオオシオカラトンボ )
※ 次回は・・・?
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楽器の “バイオリン” を 根付 にしました!
* 『旅する根付』 (写真・文 高円宮妃久子殿下) 講談社2008刊 掲載作品
楽器は、その形がすでに完成され、洗練された美しいフォルムを持っています。
美しい音色を奏でるために、余計なものをそぎ落とされたその形は
おのずと美しいものなのでしょうか・・・
その楽器の持つ美しいフォルムを損なうことなく、
根付にするにはどうしたらよいか
試行錯誤を重ねて、ようやく手のひらに丸くおさまる
世界にたった一つの “バイオリン” が完成しました。
“名器”と呼ばれるバイオリンの写真や資料を集め、
実際の『バイオリン製作』の本を読みあさり、
音楽音痴にもかかわらずバイオリンと名のつくクラッシック音楽のCDを
朝から晩まで仕事場に流し続け、
長い時間をかけてだんだんと形になっていきました。
出来る限り忠実に、そしてバイオリンの持つ特徴を損なわないように
デフォルメしながら丸く曲げて彫りだしていく・・・
デフォルメしながら丸く曲げて彫りだしていく・・・
難しさと同時にえも言われぬ楽しさを感じました。
演奏するときの必需品 “アゴあて” を縞黒檀で作り、
提げる時に“緒締(おじめ)”として使います。
11年前になりますが、この作品を創りあげた瞬間から、
何かが変わったような気がします。
この時以来、根付を創る時は、そのモチーフとなる“何か”について、できる限りの資料を集め、まずは「読んで、見て、聴いて」 ドップリとその世界に浸ってから製作にとりかかる・・・とても時間が掛かりますが、そのようなスタイルとなりました。何かが変わったような気がします。
今も楽器根付の魅力から離れられず、少しずつ様々な楽器にチャレンジしています。
< お詫び >
11年前ともなると、当時使っていたデジカメは今と比べるとはるかに画素数も少ない上に、性能も格段の差があり、記録写真が申し訳ないほどに拙く、また作品サイズ等もしっかり記録できておらず、基本データがバラバラです・・・。
何卒ご勘弁いただきますようお願い申し上げます。
◆次回は・・・検討中です。。
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一匹の巨大な“龍”の根付です
DATA
『万里の臥龍』 2010
象牙
象嵌あり(ヘゴ)
ヤシャ染
2.4 × 4.1 × 3.0 cm
~ 個人蔵 ~
世界遺産“万里の長城”は有名ですが、その延々と続く城壁は、
よく天に昇る龍にたとえられます。
『万里の臥龍』 2010
象牙
象嵌あり(ヘゴ)
ヤシャ染
2.4 × 4.1 × 3.0 cm
~ 個人蔵 ~
世界遺産“万里の長城”は有名ですが、その延々と続く城壁は、
よく天に昇る龍にたとえられます。
しかしながら私には、山の起伏に沿う城壁が、
一匹の巨大な龍の背びれに見えてしまいます。
一匹の巨大な龍の背びれに見えてしまいます。
山全体を巨大な一匹の臥した龍に見立て、
城壁があたかもその背ビレのような根付を作りました。
城壁があたかもその背ビレのような根付を作りました。
荒々しいゴツゴツした巨山の岩肌は、いつしか龍の鱗となり、
龍の手に伸びる城壁は、水の流れとなって裏面に続き、波と変化していきます。
裏面には二つの“珠玉”があり、龍がしっかりと守っています。
◆ 次回は・・・ふたたび「楽器」?
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“硯と磨りかけの墨”
DATA
『結び文』 2010
黒檀
象嵌あり(象牙、金箔)
ヤシャ染、顔料
1.9 × 3.0 × 3.8 cm
~ 個人蔵 ~
『結び文』 2010
黒檀
象嵌あり(象牙、金箔)
ヤシャ染、顔料
1.9 × 3.0 × 3.8 cm
~ 個人蔵 ~
龍の彫刻に小さな墨池(ぼくち)、そして磨りかけの墨。
龍は古代中国の伝統の生き物である「雨竜」(あまりょう)が彫られ、
墨池(ぼくち)は丸く小さく、品格の高い名品といえる重厚な古硯。
墨池(ぼくち)は丸く小さく、品格の高い名品といえる重厚な古硯。
墨は和墨で、通称“お花墨”と呼ばれる「紅花墨」で星5つの良墨です。
硯面には磨りたての墨が黒々と光っています。
硯の下にはそっと、「結び文」が隠してあります。
この硯の墨で書いた文か、それとも誰かからもらった文で
これから返書を書こうとしているのか・・・
想像がかきたてられる根付です。
これから返書を書こうとしているのか・・・
想像がかきたてられる根付です。
裏の“結び文”は象牙を象嵌したもの。
結び文にはうっすらと書いてある文字が透けてみえるようです。
このような、自分好みの雨竜の彫刻がある重厚な名硯で、墨を磨ってみたい・・・・
かなわぬ夢ですが、私の想像する名硯を「根付」で創り上げて実現させました。
前回の『浮世の夢』といい、気が付くと「結び文」をモチーフに使っている作品がいくつかありました。
◆次回は、“龍” つながりの作品になるかと・・・