『根付師 陽佳』、ときどき「湖蝶」、ところにより「桃生蛙子」

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幹周り170センチ以上はあろうイチョウの大木が庭に立っている。
乳(にゅう)と呼ばれる鍾乳石のようなおっぱいのある木だがギンナンは実らない。

ある早朝、その太い幹の中腹にひらひらとした白い小さい何かが貼りついているのに気が付いた。
近づいてみるとそれは脱皮したての半分透きとおった美しい虫の姿であった。
一瞬、蝉の脱皮かとも思ったが、よくみると蝉ではない。
触角は細く長く、誠に品の良い三角形の小顔、羽はまだ羽化直前で伸びきっていないため、全体の大きさと形はまだよくわからないが、かなり大きな羽を持つ虫と推測された。

その初々しい姿からは、子供の頃読んだイギリスの童話に登場する妖精 『 フェアリー』 のような清楚な雰囲気が漂ってくる。果たしてどのような虫なのだろうか。
このような羽化の様子は今まで見たことがない。
「もしかすると新種の虫発見!」
そんな妄想に駆られ、いつの間にかその白い半透明の妖精をビニール袋にそっと移し、ドキドキしながら家の中に入れてしまった。

美しい姿へと変身中の“レディー”の姿をあまりジロジロ見るのは失礼かと思い、薄暗がりの玄関の棚の上にそっとその袋を置き、期待に胸を躍らせながら別室で待つこと1時間。
純白のウエディングドレスに身を包んだ花嫁に対面する新郎のように、ドギマギしながら薄暗がりの棚の上のビニールをそっと覗き込むと、目に映るのは黒光りした扁平な物体がただ一つ、誰もが良く知る  “ アイツ ” !であった。
一瞬何が起こったのか良く呑み込めないまま、とっさに確認してみたがビニール袋に穴はなし、どう考えてもあの白い妖精がこの黒い悪魔に変身した以外考えられなかった。

平素ならその姿を見かけ次第すぐにお決まりの行動に出るのだが、あまりの衝撃にとてもそのような事は出来ず、庭に帰ってもらうしかなかった。
もしもこの体色が黒ではなく爽やかな緑色だったならば、“ アイツ ” の運命もまた違っていただろうにと思われてならない。

その日以来、“ アイツ ” を見る眼が少しだけ変わったことは確かである。





◆さすがに “ アイツ ” をモデルにした根付はありませんので・・・
“ 妖精 ” の根付を!

 “ 蝶の精 ” をイメージした根付 

© 陽佳 2004「胡蝶」003.jpg 
DATA
『 胡蝶 ( こちょう )』 2004
黄楊(つげ)
象嵌あり (アワビ貝 )
ヤシャ染、べんがら、顔料
1.5 × 4.5 × 2.0 cm
~ 京都清宗根付館 所蔵 ~




◆モデルは庭にくる様々な “ 蝶 ” たちです。

© 陽佳 2012「アサギマダラ?」P5160271.jpg

 © Yoka Mukaida 2014「シジミチョウ」DSC_0403.JPG 


※次回は・・・季節に合わせて


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プロフィール

根付師 陽佳

Author:根付師 陽佳
            
現代根付を創っています。

地下室で根付を創っている時は
『 根付師 陽佳 』(ねつけし ようか)

ときどき
「 湖 蝶 」(こちょう)
     の名で書や篆刻を創り。

ところにより
「 桃生 蛙子 」(ものう あこ)
    の名で詩や文章を創ります。

心を込めて創った作品を、自ら撮った記録写真。

その画像とともに、作品解説や創作エピソードなど少しずつ綴っていきたいと思います。

◆国際根付彫刻会 副会長

◆「小間物屋 徳右ェ門」主催

◆「虫」「鳥」「蛙」「爬虫類」好き

◆大学の書道科を卒業後、
某S化粧品会社宣伝部に就職、
脱サラして根付師に。

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ご訪問ありがとうございます!
かなりのIT音痴で『ブログ作成入門書』を片手になんとか開設にこぎつけました。
まだまだ操作不慣れで不手際も多々ありますが、少しずつ更新しながら改良していきたいと思います。

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